H.野菜料理

 近年は野菜に四季がなくなってきた。ハウス栽培と輸入により、一年中出回っている。でも、やはり野菜は旬を大切にしたい。それよりもまず、野菜をちゃんと食べていますか?
 東京都が主要産地の野菜がある。ウドで地下室で育てているという。

37.おひたし

 おひたしの代表はほうれん草である。ほうれん草を水洗いして、特に根の赤い部分の土を十分落とし、根の部分をつけたまま鍋でゆでる。新米主婦の中には、水からゆでてしまう人もいるそうだが、芋類は別として、野菜をゆでるときはたっぷりの湯で、沸騰してから野菜を入れる。
 ついでに、根の部分を切り落としてバラバラにしてゆでて、一本づつ拾い上げて、形を整えて切っていた人もいるので、根の部分がつながったままゆでる。
 たっぷりの湯の量というのは、野菜を入れたときに、温度が下がらない量のことであり、無駄な量の湯を使うわけではなく、野菜の量と相談する。
 ゆでる時間は、太い茎と薄い葉では当然違ってくるので、茎の部分を最初に入れて10秒ぐらいしてから、全体を湯の中に入れる。最初のうちはどうしてもゆですぎてしまう。なまでも食べられると思って、ゆですぎないように、早く上げてしまう。
 湯から上げたなら、水を張ったボウルに移してアク抜きをする。ただ5分ぐらい水に浸しておくだけである。これで苦みと渋みが抜ける。
 アク抜きが終わってから、根の部分をそろえて、水の中で全体の形を整え、水から持ち上げて両手で軽く水を絞り、まな板の上にのせて5cmぐらいの長さに切りそろえる。根元の赤い部分も食べられる。

 単純な料理なので、上手・下手はゆで方にあらわれる。たっぷりの湯であっさり、短時間でゆでることと、絞り過ぎないように、かつ水っぽくならないように、最後のしぼり加減がコツである。削り鰹節をかけて醤油をかける。海苔の細切りをかけてもうまいが、なぜか化学調味料が抜群に合う。

 おひたしは季節感や地方それぞれの味わいが大切である。
 冬から春にかけて、菜の花・ニラ・芹・三つ葉・春菊、暖かくなって山東菜、初夏のシドケやウルイ、わらびなどの山菜。
 秋には東北地方では菊(食用菊の花、阿房宮やもってのほか)を食べる。夏は生野菜がたくさんあり、おひたしの野菜が少ない。近頃は春菊もニラも、年中出回っている。
 ニラは生姜醤油で食べるのがうまい。白菜のおひたしは辛子醤油が、三つ葉と芹は、もみ海苔と相性がいい。菜の花や「おいしい菜」など、ほろ苦さに春風の香りがして、遠くふるさとを思う人もいるだろう。

 ほうれん草のおひたしというとおふくろの味になる。ポパイはほうれん草の缶詰を食べている。ほうれん草の缶詰を探していると言ったら横浜のデパートにあったと同僚が届けてくれた。スピナッチの缶詰と書いてあった。
 塩味でぐっちゃりしており、おひたしの食感に慣れている口には合わなかった。豆料理の付け合せという感じだ。他に野菜がない所で、戦場や西部の荒野ではうまく感じるだろう。

 おひたしより手軽な料理方法はほうれん草ソテーである。少量なら1分もあれば仕上がってしまう。
 ほうれん草を水洗いして、赤い根の部分を切り落とし、水気を切ってまな板にのせ、5〜6cmぐらいの長さに切る。フライパンにサラダ油かマーガリン、またはバターを入れて火にかけ、ほうれん草の茎の部分を先に入れて、箸でかき混ぜる。茎がやわらかくなってから、葉の部分を入れる。炒めながら色が変わり、やわらかくなったなら塩をふり、すぐに火を止める。
 ベーコンをカットしたものと一緒に炒めてもうまい。目玉焼きやオムレツ、ハンバーグのつけ合わせによい。しかしアクを取る場面がないので、私にはエグミというか舌に残る渋みが気になる。だからビールで舌を洗う。
 また、溶き卵を入れて卵とじにするのもうまい。卵には少量の塩を加えておく。

38.ニラ玉

 ニラ玉には汁と菜の2つがある。私の故郷、盛岡市の母が作るニラ玉は、ニラ+溶き卵がかき玉になった、醤油味の汁であった。東京の居酒屋のメニューにあるニラ玉は、フライパンでニラを炒め、その上で卵を焼いたものである。

 1人前でニラ半束を、人差し指の長さに切り、フライパンで油炒めにして、溶き卵1〜2個をニラの上にかけて、卵焼きにする。表面が固まりかけたなら、フライがえしでひっくりかえし、裏面も固まるころ皿に移す。卵焼きの中に、ニラが納まっている感じに作る。そのほうがニラの卵とじよりも、色具合がよく仕上る。ビールが飲みたくなる。
 コツはニラに必要以上に熱を加えないことであり、卵は最初に準備してから、フライパンのニラ炒めにかかる。味はシンプルに塩味の方がうまいが、食べる時に少量の醤油をかけてもうまい。 ニラといえばレバニラ炒めとか、肉ニラ炒めを連想する。レバニラはレバーの前処理が難しいので、中華料理店で食べよう。肉ニラを作ってみる。材料は豚肉薄切り・ニラ・モヤシ、そしてきくらげ。きくらげは水を入れたボウルにつけておき、水で戻して細切りにする。ニラは根元のビニールテープを取り除き、ボウルに入れて根元をよく洗い、5cmぐらいに切りそろえる。モヤシはざるにあけてざっと水洗いする。
 フライパンに油をひいて熱し、小さめに切った豚肉スライスを入れて炒め、モヤシ・きくらげを入れて火をとおす。
 次にニラの根元を入れて、塩・胡椒をして、最後にニラの葉の部分を加える。化学調味料と少量の醤油を加える。コツはフライパンの大きさ・熱量と野菜の量のバランスであり、野菜の量が多いとなかなか全体に熱が回らず、水が出てビチャビチャになる。 料理店のようにハイカロリーバーナーで、一気に調理というわけにはいかないので、少なめに作る。多く作る時は2回に分けて作る。モヤシとニラの葉では、料理に要する加熱時間が違うので、火のとおりにくい順に入れていく。

39.きんぴらごぼう・ひじき

 ごぼうサラダが、若い女性に人気があるそうだ。繊維質の野菜は、美容と健康に良いそうである。きんぴらごぼうとひじきは、おふくろの味の重要なメニューにはいる。主役にはならないが、きんぴらごぼうは海苔弁当のレギュラーメンバーであり、ご飯のおかずや酒の肴の名脇役である。
 急に食べたくなる。買って食べるとこれまた甘すぎて、私はいつもがっかりする。惣菜として売られている日本料理のおかずは、砂糖の使いすぎであり、味が濃すぎて、せっかくの素材の持ち味がどこかに行ってしまう。西洋料理には砂糖はほとんど使わないそうである。
 ごぼうを長いまま買うと、もて余してしまう。皮をむく(包丁の背で、皮をそぎ落とす)、細切りにする、ささがき(ナイフで鉛筆を削るように、回しながら薄く切る)にするにも年期がいる。ここではごぼうと人参が切ってある、きんぴらパックを使用する。

 フライパンに胡麻油を入れて熱し、ごぼうと人参を入れて、ほんの少量の砂糖をふり、酒と化学調味料と醤油を入れて焦げないように、箸でかき回しながら炒め煮にする。醤油を控え、だしつゆを入れてもよい。胡麻と七味唐辛子をふり入れて、仕上げに味醂を入れると照りがよくなる。
 「きんぴらごぼうとひじき」とセットで書いたので、ついでにひじきも。
 乾燥ひじきはボウルに入れて水を加え、30分〜1時間戻す。すごく増えるので入れ物に気をつける。少量戻して足りなければ追加すればいい。
 茎のひじきと芽ひじきがあり、乾燥して袋入れで売っている値段は、茎が高く芽が安い。歯ごたえは茎の方がいいが、味にはたいして変わりはない。両方試してみればよい。茎ひじきの場合は長いので、水で戻してからまな板の上で、食べやすいように包丁を入れて短く切る。戻しながら水を替え、ゴミを洗い流す。戻ったならざるにあけてよく水を切る。
 ひじきに加える具は、薩摩揚げ・油揚げ・人参で、いずれもひじきに合わせて細くきざむ。芽ひじきの場合は、フライパンか厚手の鍋に油を多い目に入れて火にかけ、ひじきを炒める。人参・油揚げも一緒に入れて炒めてしまう。
 茎ひじきの場合はいためると崩れてしまうので、ゆっくりと煮る。
 火がとおった頃に少量の砂糖を入れて、濃縮だしつゆを薄めて、醤油の代わりに入れる。弱火で少し煮詰めて、仕上げに味醂を加えてよく混ぜる。しばらく弱火で煮て味を染み込ませる。
 味は薩摩揚げ・醤油・油のミックスであり、好みでこってり、またはシンプルにおふくろの味に近づける。佃煮ではないので、また油揚げは調理した後、長く保存できないので早めに食べる。

40.野菜炒め

 これもぜひお薦めしたいメニューである。野菜をたっぷり取ることができる。ベースはキャベツにモヤシ、あとは人参・きくらげ・玉ねぎ・ピーマンのうち、何種類かあればよい。他に豚肉やベーコン、ハムなどの動物性蛋白質。

 キャベツは葉を上から順にむき、芯の部分を切り取り、葉を重ねて5cmぐらいの幅に切る。芯も薄く切ってまぜる。人参は皮のまま薄い板状にして、細切りにする。きくらげは水で戻してきざむ。玉ねぎは半分に切り、頭部を切り落として皮をむき、横から使う分だけ薄くスライスする。好みでピーマンも細切りにしておく。ピーマンは水洗いした後、頭部を切り落とし、手で中の種を取り出して半分に切って重ねて切る。

 フライパンにサラダ油を入れて熱し、豚肉を入れて炒め、人参・モヤシ・玉ねぎ・きくらげを入れてさらに炒める。塩・胡椒して、最後にキャベツを加え、仕上げに胡麻油を入れて香りをつける。モヤシは増量材に近いので、他の野菜がたっぷりある時は、1人分作るには1袋は多すぎるので入れない。椎茸やシメジを加えても味がよいが、この場合は少量の醤油を入れて味をつける。

 全体の味が不足であれば、胡麻油+化学調味料+醤油で調整する。焼き肉のたれがあれば加えてもよい。またインスタントラーメンの粉末スープを、味つけに使用する方法もある。コツはフライパンの大きさにあった野菜の量を守り、少なめに作り、炒めすぎないことであり、キャベツはさっと火がとおる程度でよい。

41.野菜料理

 茄子もおふくろの味である。茄子炒りや焼き茄子は、まさしくお袋の味であり、若者が作るには魅力に欠けるが、茄子が主役の若者向け料理は人気がある。本格的に作っても、むずかしいものではない。しかし、材料をそろえるのが大変なので、レトルトソースを使う。手っとり早く、味も良く、価格も手頃で保存がきくのでお薦めである。

 麻婆茄子のレトルトソースは、茄子にも豆腐にも、大根にも春雨にもシメジにも使える。友人が来て、急いで何かほしい時には、缶詰のコーンと麻婆茄子のレトルトソースで、5分でビールの料理ができる。
 茄子は洗ってヘタを取り、半割して縦に、板のように厚く切る。厚さは8oぐらいである。そして斜めに角材のように切っていくが、斜めに切るのは、長さをそろえやすいからである。
 フライパンにサラダ油を入れて熱する。茄子は油をよく吸い、油と茄子は相性がいい。茄子に火がとおってからレトルトソースを混ぜる。レトルトソースを使わないで作る時は、麻婆豆腐の部分を参照のこと。
 茄子のステーキもシンプルでうまい。茄子は1cmぐらいの厚さに切り、火がとおりやすいように、手の指のように切れ目を入れる。フライパンに油を多い目に入れて熱し、弱火でゆっくりと焼く。裏返しにして両面に焦げ目をつける。焼けたなら皿にとって、たっぷりの鰹節をかけ、醤油をかける。

 人参とピーマン
 いずれも主役になりにくい。人参はカレーライス・ビーフシチュー・きんぴらごぼう・野菜炒めなどに使うが、人参単独の料理となると、ハンバーグのつけ合わせ用のグラッセぐらいである。(人参のグラッセは、私はうまいと思って食べたことがない。残してはいけないから仕方なく食べている。第一、おかずにならない)
 新鮮な人参はそのまま生で食べる。皮むき器(ピーラー)で皮をむき、角柱に切って人参スティックにする。ウイスキーのつまみによく合う。家では生の人参など食べない人が、スナックや焼き鳥屋ではマヨネーズや塩をかけて、生でうまそうに食べるのである。
 ピーマンは嫌いな人も多い。ピザパイにのっていると平気で食べるものだ。最も簡単な食べ方は、金網で直火で焼き、表面の皮が焦げたら、冷まして薄皮を取り、手でちぎって種を取り除き、皿にとって醤油をかけて食べる。夏、ビールに合う。
 きゅうりも料理しにくい野菜である。熱を加えて食べる方法を考えてみると、無いものだ。きゅうりもみや酢の物は純和風であり、若い人には人気がない。スティックにしてマヨネーズ・梅たたき・辛味噌をつけてビールのつまみにする。みょうがときゅうりを、各地名産のなめ味噌をつけて食べると、季節と旅情を同時に味わえる。
 茸が年中出回っている。シメジと榎茸は年中、値段の変化が少ない。椎茸は山で作るので値段に変動がある。なめこも安くなった。なめこは味噌汁のなめこ汁が有名だが、醤油で煮ただけでもうまい。砂糖も何も入れず、生醤油だけのほうがおかずになる。佃煮のように鍋で煮るだけであるが、ご飯のおかず・うどんやそばの具に使い道がある。
 椎茸は塩焼きが最もシンプルでうまい。傘の部分を水洗いしてよく水を切っておく。網にひだのある裏側を上にして並べ、弱火にかける。ひだの間から水が出てきたころが食べ頃となる。片面だけ焼ければいい。うすく塩をふって食べる。
 椎茸は独特の味と香りがあるから、なまじ他の味をつけないほうがよい。
 シメジは年中出回っており、値段も手頃なので、いろいろな用途に使う。カレーライスやハヤシライス、焼き肉のつけ合わせ・バター炒め・シメジご飯・油揚げの味噌汁など、和食洋食何でも使える。豚汁に入れてもよい。スパゲティのソースにも合う。
 お薦めは玉ねぎ・ピーマンとの油炒めで、七味唐辛子を入れて醤油をたらす。たくさん余って、いたみそうななときには佃煮にする。相手は小女子・しらす干し・昆布・帆立貝やあさりなど。鍋に入れて砂糖・醤油・味醂でじっくりと煮込み、煮詰めていく。一味唐辛子か山椒を入れて香りをつける。手軽な佃煮の材料である。 

 じゃが芋
 カレーや肉じゃがに使うだけでなく、重要な保存食品であり、応用範囲も広い。そのままゆでて(半分にしてからでもよい)、塩やバターで食べるとビールがうまい。
 薄切りにしてから千切りにして、細切りピーマンとともに、ハムやベーコンと炒め、塩・胡椒で味つけをする。うんと細くきざんでもいいし、食べごたえがあるように太めでもいい。ビールがあればおかずではなく、主食にしたいぐらいで、保存材料だけを使った新鮮な料理になる。
 大皿に盛り、隣にゆでたソーセージと、溶き辛子がほしい。細長く崩れにくいメイクイン(フライドポテトにむいている)と丸い男爵がある。最近では別の中身の色が違うジャガイモもある。 男爵は北海道で「川田男爵」が品種改良したとテレビ番組で見たことがある。 フライドポテトの作り方も書きたいのだが。

 長芋
 青森県の特産品である。長持ちする野菜で冷蔵庫で半年はもつ。切り口の色は変わるが、1cmも切ってしまうと純白の中身が出てくる。すりおろしてだしつゆで割り、ご飯にかけて食べるのが一般的であるが、卵で割り、濃いそばつゆとミックスして、日本そばの汁にするとうまいことは、そばのところで書いた。
 居酒屋に「やません」と書いたメニューがあったので、注文したら山芋せん切りであった。細く切ったものに溶き卵と海苔をかけて、醤油味で食べると最高にうまい。大地の香りがして力が出る。やまいもを包丁で細く切りきざむ調理方法は、手が滑って大変な作業となる。やめたほうがいい。ピーラーで皮をむき、せん切り用の刃のついた調理用カッターを使用して、大根おろしの要領で、手を汚さずに簡単に作る。
 海苔の香り・卵と醤油味・大地の香りと山芋の歯ざわりに日本を感じる。私の大好物だ。

 おくらが出たので次はおくら。おくらは徳川家の紋どころである葵科の植物である。三男が3才の頃、飴が入ったプラスチックの印籠で遊んでいたので、「それなあに」と聞いたところ「紋どころで遊んでいるの」と答えたので吹き出した。
 おくらを水洗いして、包丁できざむだけである。小鉢にとり、醤油をかけてご飯のおかずにする。酒の肴にもなり、簡単で火を使わない、貴重な野菜料理である。 

 知人に「ねばる物が大嫌い」という人がいるが、こんなうまい物を食べられず不幸だと思う。我が家の名物料理に「めかぶ(三陸地方の特産品で、ワカメの根を刻んだもの。熱湯をかけてとろみをだす)・納豆・おくらの山芋かけ」がある。

 格好がおくらと似ているものに、ししとうがある。年中手に入る。天麩羅がうまいがここでは佃煮にする。醤油と砂糖で煮込むだけである。油揚げや薩摩揚げと煮込んでもよい。
 生の青唐辛子が手に入れば、やはり佃煮にする。恐ろしく辛いが、食べ始めるとやみつきになる。夏に直火であぶって醤油をつけて食べると夏バテの薬になると言われているが、辛い物は本当に辛い。舌が火事になってしまう。いくら水を飲んでも、その辛さはなくならずに、死ぬ思いをする。しかし、のど元を過ぎればまた食べたくなってしまう。

 夏に産直野菜販売店で「葉唐辛子」を発見した。100円か150円だったと思う。けっこうカサがある。丁寧に水洗いし、茎の硬そうな部分を取り除き、葉を刻んで佃煮にした。干し椎茸も混ぜた。作っているときに妻が「変なものを作り始めた」という顔でみていたが、「うまい。あとを引く」といいながらご飯のおかずにしていた。また作ってというリクエストがあった。 伊豆地方のお土産に葉唐辛子の佃煮があるのだ。

 キャベツ

 とんかつのつけ合わせのイメージが強いが、煮物も和・洋両方ある。洋食はロールキャベツが有名だが、手間がかかるので省略したい。

42.水炊き

 肉のところで書かなかったので水炊きを書く。水炊きは鳥肉とキャベツが基本であり、鳥肉は骨つきが標準だ。しかし、骨がないほうが食べやすく、かつゴミがでない。
 キャベツの葉は大きめに切る。手でちぎる感じである。大きめの鍋に湯をわかし、鳥肉・キャベツと、豆腐・榎茸のような味に癖のない材料を入れる。
 煮えたらポン酢・大根おろし・もみじおろしで食べる。薬味は一味唐辛子程度で、極めてシンプルな鍋料理である。
 考えてみれば、すき焼き同様にいい加減な料理である。味をつけずに、食べる人の好みでポン酢、もみじおろしの醤油味で食べるのであるが、大根おろしが重要な役目を持つ。
 好みの味をつけて食べるということは、本人の味であり、しょっぱい・酸っぱい・辛いの文句を言わせない。個性尊重の現代人好みの料理であり、素材の味そのものが大切である。
 鳥肉もキャベツも庶民的な、どこにでもある材料であり(鳥肉に凝ればいろいろある)、切って湯を沸かして、材料を中に入れて加熱するだけである。簡単に作れてボリュームがあり、好みの味つけで、しかもゴミが出ないという、最高の料理となる。客人にはごちそうにもなり、大人にはゆっくりした酒の肴にもなる。
 ついでにポン酢の小鉢はよい器を使いたい。

 材料を変え、味をつける小鉢の中味を変えれば、もつ鍋に変化する。何も入れずに、豆腐の鍋にすれば湯豆腐となる。このバラエティーは重要なレパートリーとなる。

43.海藻

 茎わかめは酒の肴にも、ご飯のおかずにもぴったりの、飽きのこない味である。塩漬けの茎わかめは、水を5回ぐらい替えながら、半日塩抜きをする。その後まな板の上で小さくきざむのであるが、ヌルヌルしているので、あまり小さくはきざめない。ぶつ切りでも構わない。そのほうが小さいものよりもむしろ、箸でつまみやすく食べやすい。
 鍋に切った茎わかめを入れ、少量の水を入れて火にかけ、生姜の千切りをたっぷりと加えて、醤油で煮込む。砂糖も酒も入れないほうがいい。磯の香り豊かな一品ができあがる。

 昆布も必需品であり保存がきく。湯豆腐には必ず使い、おでんにも重要な一品である。

 松前漬けはあまり売っていないので、なじみがない人も多いと思うが、昆布とするめを醤油漬けにした、粘りのある保存食で、青森名物のねぶた漬けは数の子が入っている。
 きざんだするめと細切り昆布の松前漬けセットが、スーパーなどの乾物売り場に置いてある。これに人参を細切りにして、醤油と酒で漬けこむ。2日ぐらいで食べられる。人参をたっぷり入れるのがコツである。人参はあまり保存できないので、少なめに作ること。ガラス瓶に入れて冷蔵庫で保存する。

 すき昆布は細切り昆布を、和紙をすくようにして、シート状に乾燥させた三陸の名産品である。煮物用であり、椎茸と一緒に濃い目の佃煮にしたり、帆立貝やあさり・油揚げ・人参などと煮る。すき昆布は保存がきき、すぐに水で戻るので、使いやすいインスタント食品である。どうしても味が濃くなりがちなので、多く作らずに、すぐ食べて無くなるように薄味にする。残念ながら三陸地方、岩手県以外ではあまり食べないようだ。