Q.お米と箸

78.ご飯を炊く

 ご飯を炊くときに、なぜ研ぐのか。炊くと煮るの違いは何か。ご飯を煮るとなぜ言わないのか。精米とは何か。なぜ精肉と言うのか。日本語はややこしい。
 玄米を白米にする工程を精米と言う。白米の外側に「ぬか」が付いている。そのぬかを、米と米とをこすり合わせて、取り除くために米を研ぐ。「研ぐ」という漢字を使う。研磨である。研がなくても食べることができる。一回、研がないで炊いてみればいい。
 ある一流料亭では米を5回研いでいる。5回も研ぐと水が濁らない。ぬかと水が混じって白い色が付く。白さが無くなればぬかが取れた印だ。手に力を入れて研ぎ、3回ぐらい水をかえればいいだろう。手間をかけるのか時間を取るのかの判断である。
 研がずに炊ける米は、ぬかを取り除くように加工された米である。

 私の母は3回水を替えて研いだ 私は小学校5年生ぐらいからご飯を炊いていた。米を研いだ水は「流し」に捨てるのだが、流しの外(家の外)には桶があり、その水をバケツにひしゃくで掬って、20メートルぐらい離れた堰に捨てるのも私の仕事だった。
 ご飯を炊くのは「三和かまど」だった。大きな釜を掛けて薪(まき)を燃やす。マッチで杉の葉に火をつけて、細く割った薪(たきぎ)を燃やして薪(まき)をくべる。薪割りも大切な仕事だった。
 昭和35年ごろの話である。「となりのトトロ」で、さつきちゃんとメイちゃんが引越ししたお家の台所を思い出してほしい。時代もちょうど同じ頃である。 

 ご飯を炊くのは電気釜を使う。炊き方は説明書を読む。米をボウルに入れて研ぐ。研ぎ方ぐらいは見たことがあるだろう。洗濯機で米を研ぐ人や洗剤で洗う人はいない。
 米粒をこぼさないように水を流してから電気釜の内釜に入れる。水平な台に置き、分量のとおり水をいれて30分ぐらいは水を吸わせてから炊飯スイッチを押す。 
 鍋で炊くのも技術であり、私にはできて魚をおろせる妻にはできない。経験がないのである。キャンプ場では電気釜ではなくコッヘルで炊く。コッヘルには米と水と量が記してあるので、後は火加減だけである。これがなかなか難しい。キャンプ料理テキストではないので割愛する。おこげを作れるのはキャンプ場だけになってしまった。おこげの味を若者は知らない。
 水だけで加熱することを「炊く」=水炊き  調味料を入れて加熱することを「煮る」ということか。

79.パエーリャ

 スペインの米料理であり、我が家では「いいかげん即席ご飯」である。お米に芯があって当然という気楽さが好きだ。
 鳥のモモ肉100gを焼き鳥ぐらいの大きさに切って、たまねぎ小1/2のスライスと一緒にオリーブオイルで軽く炒め、フライパンに2合の研いだ米を入れる。
 コンソメスープ1個を入れて、カレー粉を小さじ1杯、塩を小さじ1/2入れて、水を500cc加えて火にかける。
 ふたはしない。煮えてきたなら弱火に替えて箸でスープの素が溶けるように、全体を均一になるように混ぜる。中火にしてコトコト煮る。水分が少なくなったら弱火にして、水分が見えなくなったら火を止める。
 フライパンに傷をつけないように竹べらか箸で掬って食べてみる。芯が気になるようなら水を50ccぐらい入れて弱火にかける。
 食べてちょうどいい頃に火を止める。少々の芯は気にしない。「スペインの米料理には芯があるのか」と思いながら食べるのだ。私はスペインに行ったことがないので本物は知らない。
 鳥とたまねぎはどこでも手に入るから薦めた。春に最初に咲くクロッカスに似たサフランのめしべ(たいへん高価)の代わりにカレー粉で色を付けた。
 私が使っている専用のパエーリャ鍋は300円だった。牛丼代やラーメン代より安かった。 

80.えびピラフ

 米は研いでざるに空けておく。フライパンを温め、むきえびとたまねぎみじん切り(写真の切り方を参照)、人参みじん切りをサラダオイルで半生に炒める。
 米をフライパンに入れて塩を足し、電気釜に移す。固形スープ1個を入れて米の分量にあった水を加えて炊飯スイッチを押す。

81.しめじご飯

 シメジ半パックは洗って手で細く分けておく。油揚げ半分は小さく刻む。人参はみじん切り。小さな鍋に全部入れて薄めた出しつゆで味を付ける。
 米を研ぎ、釜にあけて具の鍋を全部入れる。米の分量にあった水を加え、濃縮だしつゆを大匙2杯加えて炊飯スイッチを押す。

82.いなりずし

 いなりずし用の味付け油揚げが旨い。以前から缶詰があったが、甘すぎて二度と買わなかった。味付け油揚げは砂糖が控えてあり、家庭で作るものと同じ味になった。だからお薦めする。
 自分で作っても簡単だ。すし用の油揚げ(厚くて中が割れている)を半分に切り、鍋に入れる。醤油大匙3杯に砂糖小さじ1杯、みりん大匙2杯を入れて、顆粒鰹だしを加え、水100tを加えて5分ほど煮る。ゆきひら鍋で落し蓋(おとしぶた=鍋の中身が浮き上がらないように、鍋の材料の上に、この場合は簡単に陶器の皿をかぶせる)をして煮るとすぐにできる。
 この油揚げを冷ましてから、中を開く。そしてご飯を詰める。すし飯を詰めたいのだが、すぐに食べるのであればご飯でもいい。時間をおいて食べるときは、腐敗防止にすし飯を詰める。

 すし飯は「タマノイのすしのこ」が簡単だ。商店で「すしのいの タマノコください」と間違えないように。

83.お箸について

 お箸について触れる。「お箸の国の人だもの」というコマーシャルがあった。わが国では箸で食事をする。中国も韓国も匙を使う。
 テレビの料理番組でゲストが「正しくない箸の持ち方」で食べる場面を見ると「料理番組に出てくるな」と思う。見ていて美しくないのだ。
 子供たちが結婚する相手を連れてきた時、「正しくない箸の持ち方」の人なら反対する。孫たちに「正しい箸の持ち方」を教えることができる人でなければならない。「結婚は本人の自由だ」などと言わせない。断固反対だ。
 しかし心配はいらない。そのような人だと子供たちが直してから連れてくるだろうし、料理ができない女性と結婚する訳はない。料理が上手な女性は箸の持ち方も正しい…と信じる。

 よくうどんを食べるせいか、割り箸が好きである。割り箸を洗って使う。使い捨てにはしない。割り箸に使う木は間伐材だという。間引いた木で、細くて建築用には使えない。柱にするような木を割り箸にはしない。

 子供とハイキングに行ったとき、林の小枝をちょっと切って、ナイフで削って箸を手作りした。同じような太さの(細さの)木をそろえ、先端を細くそいだ。子供は手作りの箸でおいしそうにお弁当を食べた。デザートは木になっていた「さるなし」だ。

 私の好きな割り箸は竹製である。普通より長い箸で、丸くなく、角張らず、手触りと長さがちょうどいい。15膳で200円からおつりが来る。うどんが滑らないし、料理用にも十分な長さであり、卵をかき混ぜたり、炒め物に使ったり、重宝している。菜箸だと紐が巻き付いて上が開かなくなり、イライラしてくるのだ。一日一組の「レストラン我が家」の来客用箸もこの箸である。 八戸の某料亭で、同じ箸が出てきた。「八戸小唄」が箸袋の裏に印刷されている。
「このお箸、食べやすいですね」と女将に言ったら「気に入っていただいて、ありがとうございます」と帰りに5膳くれた。 このごろはよく見かける。
 子供の頃におばさんから「箸の先の方を持つ人はお嫁さんを近くからもらう。上のほうをもつ人は、遠くからもらう」と言われたことがある。私は長い箸の、うんと上を持っていたようだ。盛岡のわんこそばと長崎のちゃんぽんの両方を食べられる。