I.サラダ

 生野菜は、食べられる時に食べておきたい。毎食食べる必要はない。外食での昼食時に食べておけば、夜にわざわざ準備しなくても死なない。大根も玉ねぎも人参も、生で食べられる。レタスやサラダ菜は、包丁で切るよりも手でちぎったほうがうまい。 手を加えることが料理であるが、逆に手を加えないことも料理なのである。新鮮なキャベツは、葉をちぎって、塩やマヨネーズをかけただけでうまい。きゅうりは取り立てを縦半分に切り、味噌をつけてかじる。トマトも丸のままかじると、太陽の香りがする。

44.ハムサラダ

 新幹線のビュッフェにあったから第1番目にもってきた。ハムはロースハムかボンレスハムのスライスで、青菜はサラダ菜かレタスが簡単である。
 ハムは、メーカーのスライスパックは包装費の分だけ不経済であり、肉やスーパーのスライスを常備する。少し日にちがたったなら、加熱料理(ハムエッグ・炒飯など)で使い切る。
 サラダ菜はくせが少なくやわらかく、調理方法も簡単であり、レタスよりお薦めである。根元からちぎって、水洗いするだけで食べられる。数枚ちぎってボウルに入れて、ざるをかぶせ、よく水を切る。皿に並べハムのスライスを形よく盛りつける。きゅうりやトマト・アスパラガスなど、もう一品ほしい。
 マヨネーズか好みのドレッシングをかけるが、市販のドレッシングは、どうも酸っぱすぎると思っている。酢が一番安いので、コストの点から、どうしても酸っぱくなるのかなと、ついつい思ってしまう。ならばドレッシングも自作しよう。

 器にサラダ油を入れて、少量の胡麻油を加え、醤油と胡椒を入れる。その後それまでの量の同量の酢(ここで前に書いたやわらかな味の純米酢が生きてくる)を加え、スプーンでよくかき混ぜる。キャップがしっかり締まる瓶に入れて、ふってもよい。レモンがあれば加える。
 ドレッシングはシンプルな方が飽きない。

45.マカロニサラダ・ポテトサラダ

 マカロニ自体が保存食品であり、和食のおかずやパンのおかずとしての応用範囲が広い。

 マカロニはいろいろ種類がある。おなじみの穴あきマカロニ、貝殻の形、ペンの形、車輪形など。あとの材料はハム、きゅうり、にんじんなどであり、あれば使ってみたいものにはミックスビジタブル・ゆで卵・りんご・みかんなどがある。

 鍋に湯をわかして塩をひとつまみ入れ、マカロニやサラダスパゲティを、袋の説明書の時間

どおりゆでる。スパゲティのところで書いたとおり、湯の量はマカロニの量とのバランスである。湯をわかし、ゆでている間に、他の材料の準備をする。

 きゅうりは水洗いしてへたの部分を切り落とし、野菜スライサーでボウルにスライスして、少量の塩を振り、塩もみ(塩が全体にふれるように、手で軽くもむ)しておく。ハムは数枚重ねて半分に切って、さらに重ねて千切りにする。人参があれば水洗いしたものを、野菜スライサーで薄切りにして、マカロニをゆでている途中から、一緒にゆでる。冷凍ミックスビジタブルを使う場合も同様に、マカロニがゆで上がる直前に鍋に入れて、一緒に加熱する。

 マカロニがゆで上がったならざるにあけ、よく湯を切ってボウルに移して、冷ましてから他の材料を加える。

 塩もみしたきゅうりは、手で水分を絞ってから加える。マカロニ+ハム+きゅうりをベースとして、ゆで卵や玉ねぎスライスを好みで加える。ゆで卵はワイヤー式のゆで卵カッターで縦横に2回切るのが簡単であるが、なければ大きなフォークでつぶす。玉ねぎはスライサーで薄切りにして、ざるにあけ熱湯をかけて苦味を取る。

 味つけは塩・胡椒して、マヨネーズを加えてほんの少し酢を加え箸でかきまぜる。練り辛子を少量入れると味が引き締まる。レーズンを入れるとさらにうまい。

 ポテトサラダは、じゃが芋をゆでることから始まる。丸のままゆでると、味はいいが時間がかかる。(30分から40分)

 皮をむいて小さく切ってからゆでると、すぐにゆで終わるが香りが落ちる。

 電子レンジで加熱する調理方法は、芋の香りが水に流れないので、風味が抜群によく仕上がる。この場合にも、最初からきざんでおくと後が楽である。

 じゃが芋の皮をむき、流水で表面についた土を洗い流してから四半分にして、さらに5o間隔にスライスする。鍋に湯をわかし、じゃが芋を入れて数分間ゆでる。途中取り出してみて、柔らかくなったら(箸で突き刺したり、食べたり割ったり)火を止めて、湯ごと鍋からざるにあけて水分を切りボウルに移し、熱いうちにフレンチドレッシングを芋に直接かける。冷めたら塩・胡椒で味をつける。

 塩もみしたきゅうりやハムの千切りを加え、マヨネーズを多い目に加える。りんごのスライスや夏みかんを入れるとうまい。人参があれば、芋と同様にスライスしてゆでて入れると、色どりがきれいである。

 

 おいしいポテトサラダを食べたいと思っていろいろ研究していた。ミルクを入れたり芥子(カラシ)を入れたり、酢を加えたり、スライス玉ねぎに湯をかけて苦みを消したり。でも今いちレストランで少量付いてくる天下一品の味とは遠い。

 13年8月、日本経済新聞「私の履歴書」に帝国ホテル料理顧問(元専務取締役総料理長)の村上信夫氏が登場した。村上信夫氏も万年筆のコレクターであり、若いころの修業時代の話は以前読んだことがある。
 当時の職人は(今のことは私にはわからないが)自分の技術を盗まれないように人には教えないのが普通であった。連載8日目にポテトサラダ名人の料理長の話が出てくる。味付けの時間になると、「食事に行ってこい」とその部屋から出されるそうだ。読んでいて私も味の秘密に大きな興味をもった。
 10日目に、出征することが決まって「餞別レシピ」を先輩コックから教えられ、あっけなく今ならば企業秘密に属する味付けの秘伝が少ない行数で書かれていた。マジックの種明かしをしてくれ、胸のつかえが下りた。材料の分量(レシピ)よりも調味料を使用する手順にその秘密があった。お盆休み中に実家で、三男といっしょに指定された手順で作ってみた。午前中に作って冷蔵庫で寝かせ、午後からは近くの温泉に遊びに行った。夕食時に姉が「芋臭さが全くない」と絶賛してくれた。日経新聞の記事を無断で転載できない。作成画像を参考にして頂きたい。 

46.シーチキンサラダ・アスパラガス

 レタス+缶詰シーチキン+マヨネーズで作る、簡単なサラダである。シーチキンは何かと役にたつ。
 レタスは葉をちぎり、ボウルに入れて水洗いする。葉は手でちぎり包丁は使わない。ボウルにざるをかぶせて、よく振って水を切る。シーチキン缶詰をあけてレタスに加え、塩を振り、マヨネーズを加える。缶詰にサラダ油が入っているので、マヨネーズは少なめにする。そのまま食べてもいいが、パンにはさんでもうまい。
 レタスに塩をかけて食べるだけのものを、レタスオンリーという発音から、ハネムーンサラダというそうだ。
 アスパラガスは、ホワイトアスパラガスの缶詰と、ゆでてサラダにするグリーンアスパラガスの2種類あるが、もともとは同じ物であり、土の中で育った物がホワイト、地表に顔を出した物がグリーンアスパラガスである。
 缶詰のホワイトアスパラガスは、喫茶店やレストランのサラダについてくるが、日本では普通、生は売っていない。自分で作るのはグリーンアスパラのサラダであり、旬は初夏であるが、近年は輸入物が年中出回っており、アスパラを食べられる感動が薄くなった。細いものより太いほうが値段が高いので、上等ということになるのであろうが、じゅんさいやなめこは、粒が小さい方が高級品である。
 旬のアスパラをさっとゆでて、マヨネーズか塩を振って食べる。アスパラは水洗いして、太い物は根元の方を2cmぐらい切り落とし、三角形の袴の部分は、下の根元の方についているものだけ取り払う。 半分の長さに切って、鍋に湯を沸騰させ、塩をひとつまみ入れて、根元の太い方を先にゆで、1分ぐらいたってから先の穂の部分を入れてゆでる。太さがいろいろあるので、何分間ゆでるとは書きにくい。とにかくゆで過ぎないように数分間である。
 細い物はフライパンでバター炒めにしてもよい。太い物をバター炒めする場合には、あらかじめ固くゆでておいた物を使用する。円筒形の太めのアスパラを、初めからバター炒めにするのは、バターが焦げてアスパラは生と、難しいものである。
 細目のアスパラをサラダ油で、ベーコンと一緒に炒めたものが、これまたビールにぴったりである。

 オニオンスライスは、オムライスやチキンライスの仲間ではなく、生野菜である。玉ねぎの外皮をはがし、頭部を切り落とし、根の部分はつけたままスライサーで薄く切る。
 包丁で薄く均等に切るのは難しいので、便利なスライサーを使用する。大きい玉ねぎは斜めにしてスライスする。ボウルに水をはり、その上でスライスして水にさらすと刺激が少なくなり、食べやすくなる。
 器に水気を切った玉ねぎスライスを盛り、削り鰹節をかけて、酢醤油で食べる。ご飯のおかずと言うよりビールのおかずになる。鰹節をたくさんかけることがコツである。シーチキンをかけてもよい。ゴルフ場の定番メニューである。
 玉ねぎは保存食品であり、かつ、生で食べられる貴重な野菜である。

 新鮮な大根があるときは、生のまま食べてみよう。新鮮な大根を千切りにして、シーチキンの缶詰や煮たわかめをかけて、海苔を振り、醤油をかけて食べる。色が寂しいので、かいわれ大根を上からかけてもよい。大根は生のまま5cmぐらいの輪切りにして、それから皮をむくとむきやすい。製材するように板状に切り、まな板の上に重ねて千切りにする。

 シーチキンの他にカニ蒲鉾・焼いた油揚げ・竹輪など、醤油と味があう和風の蛋白質を加えて、ボリュームをだすと若い人にも向く。