12.そば |
13. スパゲティ 小麦粉は薄力粉・中力粉・強力粉と、大きく3種類に分けられる。 薄力粉は小麦粉の粘りが弱い粉で、粘りが出ない料理…てんぷらなどに使用される。小麦粉を練ると、中のグルテンが粘りを出す。グルテンの少ない粉を、グルテンが活動しないように低温であっさりと溶くのが、氷水を使うのが、てんぷらのコツであった。 逆に強力粉は、粘りが必要な料理…パン造りなどに使用する。中間の中力粉(薄力粉+強力粉)は、うどんやパイ生地に使う。 スパゲティは硬質の強力小麦粉を使って作られる。硬質の強力小麦の品種がデュラム・セモリナである。 イタリアではデュラム・セモリナ以外の材料を使ってスパゲティを作ってはならない… ドイツでは大麦と麦芽以外の材料をビールに使ってはならない…ということを読むのだが、どのような法律に書いてあるのか、素人の私が調べることではない。プロの料理の本にも書いていない。 このデュラム・セモリナ100%こそがスパゲティの神髄であり、堅いプツプツした食感がある。逆にやわらかくニチャニチャしたスパゲティを想像してほしい。 讃岐うどんも「コシ」が命である。歯応えのある食感を出すために、生地を足で踏んで粘りを出し、ねかせて弾力を増す。東北のうどんは、稲庭うどんを除き一般的にコシが無い。小麦粉を捏ねて製麺しただけの(弾力もコシもない)うどんは、昔の代用食の名残である。 デュラム・セモリナ100%のスパゲティを、「アルデンテ」に茹でる。アルデンテとは固ゆでのことであり、スパゲティを茹で、ガラスに挟んでつぶしてみたときに、中央に一筋の芯が残っている状態である。余熱で芯がなくなる。 くれぐれも茹で過ぎてはいけない。大きな鍋で、たっぷりの湯で、塩を入れて茹でる。塩はスパゲティに味が付くぐらいに入れる。パラパラとふるのではない。 スパゲティは茹で方で決まる。うどんやそばは茹でてから水洗いをする。スパゲティはラーメンと同じく茹でたままである。粉臭くならないように、たっぷりの湯を使う。 町の食堂のように茹でてしばらく経ったスパゲティを、フライパンで焼きそばのように炒める料理は、付け合わせであってスパゲティではない。 スパゲティが茹で上がったときに、ソースも同時に仕上げる。すぐにソースを絡ませるためにはバーナーが2つ必要なので、最初の原稿では入れなかった。しかしスパゲティブームの今、入れないわけには行かない。 私が結婚した頃、オイルショックの頃はスパゲティの材料は「強力小麦粉」と書いてあった。輸入品のデュラム・セモリナ100%を発見したときはうれしく、たくさん買っておいた。 妻が強力小麦粉のスパゲティを買ってきたことがあった。私は黙っていたが当時小学生だった長男が「おいしくない」と言った。プツプツの食感が分かるのである。今は各社ともデュラム・セモリナ100%になったようだ。 オリーブオイルとニンニクは必需品である。麺(そうめん・うどん・そば)に醤油と鰹節と昆布が必要であるのと同じように。 サラダオイルはくせがない。オリーブオイルはくせがあるが酸化しない健康食品であり、最近ではスーパーでも数種類置いてある。価格も買える値段になった。 外食のスパゲティ1皿の値段で、500cc入りのビンが買える。出来上がりの味を考えれば高い買い物ではない。 オーレオ オリオ ペペロンチーノ ニンニク、オリーブオイル、ペッパーの単純なスパゲティ。別名「真夜中」のスパゲティとも言うそうだ。すぐできる「ざるそば」のような、夜中におなかがすいた時や、イタリアではオペラから深夜に帰宅して何か 食べたい時に、時間を掛けずに作れるスパゲティである。 私が80年代前半にローマに行ったとき、ミラノ駐在商社マンが「いちばんおいしいスパゲティですよ」と教えてくれた。当時は大都会の専門店は別としてミートソースとナポリタンしかない時代であり、私も名前も聞いたことはなかった。レシピはメモして持ち帰った。「イタリアの盛りそばのようなものだ」と思って作り我が家の定番料理になっていた。今ではたいへん有名になっている。 フライパンにオリーブオイルをたっぷりと入れて火にかける。ニンニクスライス(小さいかけらで1個、大きめのかけらで半分)を入れて、オリーブオイルの中で泳がせる。火が強く高温になると、ニンニクのにおいが悪くなるので、一旦、フライパンから取り出してもいいし、火を弱めてもいい。 次に赤唐辛子輪切り(小さなもので1本分)を油の中に入れ、主成分のカプサイシンが溶け出すようにゆすり、スパゲティを加えて、ゆで汁を少量入れてから塩を振り、ニンニク・唐辛子が良く混じるようにフライパンの中をかき混ぜる。 (パン粉を少し振ると、色がついて見栄えが良くなる。) 油の温度を上げ過ぎないように、また、にんにくを多い目に使うことがコツである。 カルボナーラ カルボナーラとは炭鉱夫のことらしい。カーボン=炭である。 パンチエッタ(生のベーコン・豚バラ肉の塩漬け)・パルメジャーノ・黒胡椒・生卵が材料である。 パンチエッタはベーコンで代用できる。パルメジャーノ・レジャーノとはパルモ地方のチーズで、食べる時にすり下ろして使う。これはパルメザンチーズまたは粉チーズとして丸い筒に入って下ろしたものを売っている。「風味が違う」と言われても、パルメジャーノは都会の大きなデパートでなければ、普通のスーパーマーケットでは売っていない。現に私には手に入らない。 黒胡椒は「荒引き胡椒」として市販されている。ラーメンに使うテーブル胡椒(白胡椒)では、炭には見えない。 卵は、「美味しんぼ」では黄身だけを使うのがうまいとなっているが、白身が勿体ないので、ゴミを出さない・捨てないテーマであるから、黄身も白身も一緒に溶いておく。 一人前で2個をボウルに溶き、パルメザンチーズと黒胡椒を入れて準備しておく。 フライパンにオリーブオイルを入れて火にかけ、細く切ったベーコンを炒めて、スパゲティを入れる。塩を振り、味が決まったなら一気に卵を入れてすぐに火を弱め、止める。 生卵のソースで和えると思った方がいい。火を入れながら卵を混ぜようとすると、必ず固まってしまう。固まったならソースでは無くなる。 生クリームをいれるレシピがある。ローマでは生クリームを入れないそうだ。生クリームは買い置きするわけがないので、ローマ風に入れないで作ろう。 バジリコ バジルの生の葉が手に入ったなら。 バジルの生の葉は1人前で6枚、細かく刻む。小鉢にオリーブオイル+パルメザンチーズを入れ、刻んだ葉を混ぜ、すりこ木でつぶしておく。…ソース 「平麺のリングィーネ」スパゲティを茹で、フライパンで暖め、塩味を付けて、ソースを絡めて出来上がり。 これが食べたくてバジルを育てている。しそ科の植物で八戸でも種から栽培して収穫している。ベランダにも2鉢おいてあり、妻はピザトーストに使っている。 町の食堂のナポリタン 玉葱とピーマンの細切り、ハムかベーコンを細く切ってフライパンに入れ、オリーブオイルで炒め、スパゲティを入れてオレガノ(トマトに良く合うイタリア料理のスパイス)・塩・胡椒を振り、ケチャップをたっぷりとかけて味を調える。 ケチャップだけでもいいが、たくさん入れると味が甘く、くどくなる。少ないと滑らかさが足らない。オムライスもそうだが、トマトピューレをミックスすると滑らかになり色も鮮やかで、味も濃すぎず薄すぎず、洋食屋さんの味に近づく。 ピーマンよりもナスがお薦めである。ナスの場合、ケチャップ+多い目のトマトピューレを最初に加えて、塩・胡椒ほかのスパイスを入れソースを作り、最後にスパゲティを和える。 ボンゴレ オリーブオイルをフライパンに入れ、ニンニクスライスを加えてこがさないように加熱する。ニンニクがやわらかくなってから、砂を吐かせたあさりを入れ、白ワインを入れてパセリのみじん切りを振り、フライパンに蓋をする。 ワインが熱くなり、あさりが口を開ける。…あさりのワイン蒸しである。このままでも美味しい料理である。そこにスパゲティを入れる。塩・胡椒で味を調える。ワインとあさりのスープがフライパンに少し残り、濃い目の塩味にすることが美味しく感じる。 大きめのあさりから出る生のスープ・白ワイン・ニンニクの3つが揃わないと、あっさりした味にならない。 「あさりがいっぱい パスタがうまい」のコマーシャルソングが明るくて楽しい。どんな人が歌っているのか知りたい。 和風スパゲティ 昭和50年の半ばにJASの機内広報誌で読み、すぐに作ってみた。簡単でうまい。 生だいこんの千切りをたっぷり準備し、ツナフレーク缶詰(シーチキン)と刻み海苔だけで、料理はしない。 茹でたてのスパゲティを皿に盛り、生だいこんの千切りをのせて、シーチキンを缶からオイルといっしょにかける。一番上に刻み海苔をちらして、醤油を掛けて食べる。 生だいこんサラダにツナ缶のオイルがピッタリであり、海苔と醤油は「釜揚げうどん」のようなシンプルな味を作る。 手間がかからずにこんなおいしい料理を紹介してくれた航空会社に感謝する。 明太子のスパゲティ フライパンにオリーブオイルを入れ、弱火にかけ明太子を箸でていねいにバラす。かたまりをサラダオイルでほぐしてからスパゲティを入れ、青じその千切りを混ぜて、塩で味を調える。タラコにバターでも良い。だが明太子のほうが絶対にうまい。 |