盛岡の朝市で、秋田稲庭うどんの「かんざし」を見つけて買った。
かんざしとは、うどんを延ばして乾燥させるとき、棒に絡んでかんざしのように曲がった弧の部分の切れ端である。
連休で子供たちのところに帰り、「うどんかんざし」をじっと眺めてどのように料理しようかと思案していた時、かんざしが「小田巻き蒸しに変りたい」とメッセージを送ってきた。「そうだ。歴史から消えてしまわないように、小田巻き蒸しにしてあげよう」とうどんに話しかけた。
「一人暮らし」のテーマから外れてしまう。
子供たちは久しぶりに親に会って「蒸し物を食べたい」とリクエストしていた。茶碗蒸しが小田巻き蒸しに格上げになった。
手間がかかりすぎる割に、おいしさは「うどんでもなく、茶碗蒸しでもない」ので、メニューからはいつの間にか外れた。
「しずやしず しずのおだまき くりかえし むかしをいまに なすよしもがな」
苧環(おだまき)とは、「紡いだ麻糸を巻いて玉状にしたもの」(集英社 国語辞典)で、うどんが玉状になっている。